「海寿山 満福寺 密蔵院」は日本史の時代区分に於いて室町時代にあたる1469年に中興された、御朱印十一石を有する真言宗智山派の古刹である。このように書くと、あたかも仏教について造詣が深いと思われるかも知れないが、自慢ではないがその方面の知識は殆ど無い。
にも拘らず私がこの寺に興味を持ったのは、ご祈祷や奉納、はたまた御朱印収集等の為ではなく、ただ単にここが「安行寒桜(アンギョウカンザクラ)」の名所との情報を得たから、という実に罰当たりな事由に因る。
何はともあれ早速出向こうと考えたが、その前に解決しなければならない問題がある事は充分承知している。
先ずは新型コロナウイルス。これについては感染予防として室内の換気が薦められている位であるから、屋外にある境内が余程人だかりになっていない限りリスクは少ないと判断した。
次はアクセスである。埼玉県川口市安行原、この付近は昨年紅葉狩りに車で行って酷い目に遭った場所。とにかく道幅が狭く、その割りに交通量は多い。おまけに蓋の無い側溝まであって、脱輪でもしたら万事休すだ。
しかし「鹿が通るのであれば馬も行ける」と「鵯越の逆落とし」の奇襲に成功した源義経に倣えば「ベビーカーも自動車も同じ」ではないか。どうって事は無い、後は「路子」(私が勝手に付けたカーナビの名前)の言う通り運転すればいいだけだ。
そうやって何とか己の及び腰と折り合いを付けて出かけた。
近くまで来た所で「路子」は右折を要求し、更に「この先、道が狭くなります」と言う。この台詞は去年、紅葉の名所、興禅寺へ向かう時に聞いた覚えがある。果たしてその地点を目視した時、私は思わず叫んだ「えっ! まさかここに入って行くのか?」
殆ど隙間のような狭いその道を、対向車が来ない事だけを祈り先へ進んだ。すると今度は「目的地周辺です。音声案内を終了します」と言う。だが、それらしき建物も桜も見えない。「おい路子、こんな所で止めるなよ、行く時は一緒といつも言っていたではないか」そう文句を言いそうになったが、仕方なくそのまま進み少し広い場所で車を止めた。
そこで私はスマホを取り出し、今度は「道代」(私が勝手に付けた地図アプリの名前)を起こして確認するが、こんな狭い道路まではフォローしていない。天を仰ぎかけたその時、前方から自転車に乗った女性が来た。彼女は路頭に迷う哀れなオッサンに、懇切丁寧に「その先を左」と、淡々と教えてくれた。
言われるままに角を曲がった瞬間、いきなり思いも寄らない景色が視界に飛び込んで来たのだ。
おおっ、これは、桜。なにげに凄いではないか!
後ろを振り返る。
坂を上り詰めた所が参道入口。
ここから参道は下り坂。
入口
無事、本殿に到着。
寺の開花情報によれば五分咲きとの事であった。しかし私は苦労して来た甲斐があったと充分満足したのだ。
以上、本稿の目的はあくまで「桜」だった為「密蔵院」について殆ど触れなかったが、それではあまりに不親切と考え、一応参考までにリンクを。
ところで私は、またしても「安行寒桜」に関する新たな情報を手に入れてしまった。埼玉県坂戸市を流れる「越乃川」沿いに、1.2kmに渡り桜並木があると言うのだ。
次回に続く、かどうかは保留とさせて頂く。