「風のかたみ」は御高承の通り福永武彦の王朝ロマン小説のタイトルである。私は学生時代からこの作家の作品が好きで、所謂純文学、推理小説、評伝、随筆、詩集に至るまで出版された粗全著書を所持している。
では何故このタイトルを選んだのか。特に深い意味は無く、ただ何となく「風」という言葉が好きっだったからかも知れない。
だが中学の同級生が学習院大学仏文科に進学、福永教授の授業を受講し「あまりの印象の悪さに幻滅」との手紙をくれた事もあった。
私は数えきれない過ちの記憶と共に、このような思い出深い蔵書、レコード、楽器に取り囲まれ生活している。これこそが私の形見なのかも知れない。
跡もなき波行くふねにあらねども
風ぞむかしのかたみなりける
(風のかたみ 十七刷 より引用)