1964年10月10日、その日東京は前日の風雨がぴたりと止み、朝からまさに秋晴れ、抜けるような青空が広がった。
同日の午後、我が家は家族揃って自宅の白黒テレビを見入っていた。勿論、東京オリンピック開会式の中継をである。
私はまだ小学校低学年で定かな記憶はあまり残っていないが、それでも心躍るような気持ちになっていたと思う。
式典がほぼ終了した頃、外が騒がしいので父親と一緒に出てみると、形は崩れていたものの、微かに色のついた雲が流れていた。それは航空自衛隊ブルーインパルスが神宮外苑上空に描いた会心の五輪マークの名残であった。
その光景だけは今でもはっきり覚えている。かれこれ半世紀以上も前の出来事だ。