訃報

 その知らせは突然に、しかもあまり普通ではない形で私に届いた。

 6月12日の夜、私は古くからの知人と馴染みの寿司屋で酒を酌み交わしていた。その時ふと、以前であればこの場に居ても何も不自然では無いもう一人の知人の事を思い出した。

 その彼は従前より肺気腫に罹患し暫く入院していたが、少し前に退院し自宅にて療養中、ただ家では酸素吸入を続けなければならず、殆ど外出も出来ない状態であった。

 それでも偶に電話で話す限りは、いたって健康そうな声に思えたが、話が少し長くなるとやはり咳込む時もあり、従って酒席を共にするなど不可能で勿論誘う訳にはいかない。

 決して自ら望んだ事ではないにも拘らず、自宅に引き籠らず得ない彼に対し、私は会話の負担軽減も兼ねて、時折LINEを利用し季節の花の写真をスライドショーにしたものや、かってよく一緒に行った蕎麦屋の美人女将の近況等を送ったりしていた。そうする事で少しでも社会との接点が保てるのではないかと考えたのだ。

 恐らく手持ち無沙汰だったのだろう、彼は直ぐに私からの連絡に対し謝辞と写真への世辞を送り返してくれた。そんな事もありその晩も寿司屋での状況を撮った写真を送ったのだ。

 果たしてその夜も彼から直ぐに返事が来た。そこには参加出来ない事を残念がる言葉が淡々と書かれていた。もしかしたら私は非常に残酷な事をしてしまったのかも知れない。しかし、いつの日かまた一緒に吞める時が来ると考えていたのだ。

 翌6月13日、今度は紫陽花のスライドショーを彼に送った。暫くしてLINEは既読を示していたが何故か返事は来なかった。少し体調が悪いのだろう、私はそう思った。

 そして14日、iPhoneは彼からのメッセージが届いた事を告げた。

 しかし、そこに書かれていた文面を私は直ぐに理解する事が出来なかった。

「✕✕さま △△の家内でございます。きれいな紫陽花の写真、ありがとうございます。実は昨13日の夕方、夫は息を引き取りました。退院からの自宅介護で病気としっかり向き合い戦いました。先ずはご報告まで」

 

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