一旦気になりだすと、どうしようもなく気になって仕方が無い言葉遣いがある。例えばファミリーレストランへ行き、仮に「親子丼」を注文したとしよう。暫くすると店員が出来上がった品をテーブルに置きながらこう言う「お待たせしました、こちらが親子丼になります」。
いや、ちょっと待って貰いたい。鶏肉や卵等を持って来て、これからそれらを調理して親子丼になると言うのであれば未だ解るのである。しかし既に親子丼として確立された物が、如何にして更なる親子丼になると言うのか。
もしかしたら、その店の親子丼は一般的な親子丼ではない為、客が戸惑う事がないよう「うちじゃあ、これが親子丼じゃけんね」と宣言する意味で、敢て「なります」と言っているのかも知れない。
しかし、事が親子丼程度で済めばいいが、これが産婦人科だったらどうなるのか。生まれたばかりの赤子を見せられて「こちらがあなたの赤ちゃんになります」とか言われた暁には、一体どう対応すればいいというのであろうか。
これは多分、「偏差値低い系アルバイト店員用マニュアル」みたいな物があって、それに書かれているのだろう。そう考えつつ調べてみる事にした。
そこで先ず料金を徴収し、良質の番組を提供している筈の日本放送協会であれば、必ずしや正確な日本語を把握していると思い、サイト内を探す。やはりあった。
どうした事か何だか煮え切らない。実に不完全燃焼である。何故同じ局内のチコちゃんのように、舌鋒鋭く結論付け出来ないのだろうか。しかし、そうこうしている内に、また新たな気になる言葉遣いが現れた。
今度はあなたがこう聞かれたとする。「この夏あなたは海外旅行に行きますか?」
計画がある人は「はい、ピョンヤンへ行きます」(普通は行かない) とか答えればいいのだが、予定の無い人はついこう言ってしまうのではないか。「いいえ、行かないです」
どうしてキッパリ「行きません」と言えないのだろうか。
恐らく咄嗟に質問内容を判断し答えようとして、取敢えず相手の質問の「行く」を「ない」という否定形に変え、そのままでは気が引けるのか、「です」を付けて丁寧に聞こえるようにしただけではないのか。実は情けない事に、時折自分でも同じような言い方をする時があるのだ。
何となく英語で Do you ?で聞かれているのに、yes とか no としか言わないのに似ているような気もする。尚この場合、正確には「Yes, I do」とか「No, I don't」と答えればよい。
果たしてこのような言葉遣いが正しいのだろうか。再びNHKをチェックする。
勿論、日本語も時代と共に変化してきた事は認める。従って新しい言い方も、やがて何の違和感も無く定着する日が来るのかも知れない。
そして私は、かって日本語の乱れを恐らく嘆いたであろう先人達の心情に、一人思いを馳せるのである。