クリスマスはディナーショー

 子供の頃、有名外人歌手が来日、コンサートの他にホテルでディナーショーを開いた。大きく報じられたのはその料金で、1人当たり5万円だったと記憶している。大卒の初任給が9万円弱の時代の話である。

 一体どのような人達がそこに行くのか想像もつかなかったが、後になって大物演歌歌手のディナーショーの模様を週刊誌で見た。超ど派手で素敵な眼鏡を掛けた、ビア樽のようにふくよかな厚化粧の中年女性が、花では無く、一万円札で作った首飾りをその歌い手にかけている。

 「これは自分とは関係無い世界の話だ」そう思って、以来長い年月が過ぎた。

 やがてディナーショーの事など、完全に記憶の深淵に沈み込んでいた2017年4月、私は偶々NHK、Eテレの「おとなの基礎英語」という番組にチャンネルを合わせた。思い返せば、それが今回の物語の始まりだった。

 では先ず、そのきっかけとなった番組から。 

www.youtube.com

 なかなか面白そうなので、以後録画して毎回欠かさず視聴する事としたが、今まで全く知らなかった、チャーミングなネイティブスピーカーの講師のお嬢さんが気になり、さっそく調べてみた。

 彼女の名前はサラ・オレインSarah Àlainn)、一体何者なのか。

ja.wikipedia.org

 これを読む限り、オーストラリア出身の才媛で、歌やバイオリン等々を生業としているらしい。やけに立派な経歴の持ち主のようだが、その実力や如何に。取り敢えずYouTubeの中で比較的再生回数多い曲をチェック。(このブログ内で再生可能なものに限った)


サラ・オレイン - A Time For Us ~ 永遠の愛

 私も長年楽器を触っているので、A=440Hz 程度は音叉無しでも判るが、1/fとか絶対音感等と言われても判断出来ない。だが、確かに3オクターブと言われる広い音域の声は綺麗だしバイオリンだって弾いている。

  更に彼女がラジオで冠番組を持っている事が判明。

www.tfm.co.jp

 これらを見聞きし、彼女が多才な事は理解した。だが私が好きなキャロル・キングローラ・ニーロジョニ・ミッチェルといった女性ミュージシャンと比較すると、どうしても物足りなさを感じざるを得なかった。

 しかし今年の夏「かつしかシンフォニーヒルズ」で行われたシング・ライク・トーキングのコンサートへ行って、その評価は大きく変わる。その日、サラ・オレインはゲスト出演し、この曲を歌ったのだ。

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かつしかシンフォニーヒルズ 2019.8.26


SING LIKE TALKING feat.サラ・オレイン「闇に咲く花 ~The Catastrophe~」ティザー映像

 私は、このハモりの部分の最高音(A5)は、恐らくライブではこんなに綺麗には出ないだろうと考えていた。ところが彼女は難なく歌い切り、それを聴き終えた私は、久々に背筋がゾクゾクするのを覚えた。「これは凄いかも知れない」

  唐突に話は変わる。ダジャレが得意な外国人と言えば、先ずデーブ・スペクターの名が浮かぶと思うが、このサラ・オレインもかなり寒い親父ギャグ愛好者で、例えば、以下のような事を言っている。(最後のドヤ顔が何とも微笑ましい) 

駄洒落サラ

 他にも、 宮崎公演に行った際の自撮り写真には「宮崎地鶏」、台湾公演がある時は「皆さんと一緒に行きたいわん」、「フーテンのサラ」や「サラッと云々」、「サラメシ」等々枚挙に暇はない。また、訪れた各地の方言を敢て使ったりする姿勢には好感が持てた。 

 そして気がつくと、いつの間にか私は立派なファンになっていた。

 さて、ここで重大な秘密を明かす。何を隠そう、実は私は二年ほど前から、彼女のサポーター、即ち「1/f」という公式ファンクラブの正規会員なのである。

 ファンクラブというと、何やらアイドルの「追っかけ」みたいで気色悪いが、生まれて初めての年甲斐もないこの所業は、はっきり言って周囲の者から奇異な眼差しで見られている事は事実であり、遂には「バカなの?」とまで言われる始末だ。

 尚、コアなファンの方々のように「サラ姫」とか「姫様」等とは間違っても言ってはいない、念の為。

 それでも折角入会したので、コンサート等の先行発売を大いに利用しようと考えていた。ところがSuchmosファンの同伴者に打診すると、これまでクラプトンやイーグルス等には二つ返事で行ったにも拘らず、今回は何故か「趣味じゃない」と即座に却下、仕方なく一人で何度か足を運んだりしていた。

 そこで思いついたのが「ディナーショー」。(漸く、この話題にたどり着いた)歌や演奏ではなく、食い物で釣ろうという作戦である。因みに有名どころの今年の相場は以下の通り。

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 えっ、あの永チャンもディナーショーとかやるのか。そして私の結果はこれ。

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 かって幼い頃、別世界の話だと思ったディナーショーに、遂に行く日が来たのである。

 しかし、届いたチケットを敵が機嫌の良さそうな時見せると「さよなら」とか「花束を用意した方がいいのでは」などと言われ、まだまだ前途多難である。怖いのは「着ていく服が無い」という言葉だが、流石にディナーショーで「お一人様」は辛い。それこそ「クリぼっち」になってしまうではないか。12月24日はすぐそこまで、果たして本当に「クリスマス」(これ、今週のお題)は来るのだろうか。

 

 サラ・オレイン、素養や実力を兼ね備え、ミュージシャンとして既にある程度認められた立場を築いているとは思うが、出来れば今後、オリジナル曲の大ヒットが欲しいところである。 

 そしてそれは、地道な活動を続けながら売れない日々を送っていたオフコースが「さよなら」で一躍スターダムに上ったように、ほんの少しの幸運とタイミングさえ合えば実現可能と思料する。是非、大きく羽ばたいて貰いたいものである。

 さて、それでは今回は「大人の基礎英語」最終回のリンクを貼って終了する。尚、9分過ぎにサラ・オレインのしょーもない駄洒落を、サラサラっと聞く事が出来るので良かったらどうぞ。


おとなの基礎英語 2017年 Session96

 

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