木綿のかもめが翔んでイスタンブール(2/2)

 「オーケストラで歌う 青春ポップスコンサート 太田裕美庄野真代渡辺真知子」が行われる「川口総合文化センター・リリア」は、1990年、埼玉県川口市市街地再開発事業の一環としてJR川口駅西口前に建設、開業した文化施設で、「リリア」の愛称は市の花「テッポウユリ」に由来する。

 (念の為申し添えると、かって風俗店街として有名だった場所は、西川口駅西口なので、くれぐれも混同する事が無い様願いたい)

 ここには2,000人を収容するメインホールの他、大小様々なホールや設備があり、クラッシック系のコンサートを主体に、各種公演や成人式等の行事に使用されている。

 私は今迄何度かここを訪れた事はあったが、それは全てタワーの上層階にある中華レストランに行く為で、コンサートホールに入った事は無い。昨年、岡村孝子の公演に行こうと考えていたところ、彼女が急性白血病を発症し中止となってしまい、以後、機会が無いままだった。

 当日2月2日、この日は日曜日と言う事もあってか、公演は15時30分開場、16時開演、18時終了と早い。この時間帯であれば夕食前に終わるので、空腹に耐えながら音楽を聴く必要は無い。また観客の帰宅時間も早くなる為、比較的遠方からの来訪も可能である。今や時短、ゆとりが求められる時代、今後このようなスケジュールのコンサートが増えるのではないかと思う。

 そして私は15時過ぎ現地に到着。

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 エントランス前

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 未だ時間があるのでウロウロ。 

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 一応、掲示板で催物を確認、メインホール以外にも色々やっている。

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  ポスターの下に「完売御礼」の文字。これは2,000人もの人間が一つの空間にひしめき合う事を意味する。

 そこでふと考えた。この時期それだけ人が集まれば、新型コロナウイルスはともかく、インフルエンザに罹患しながらも、無理して見に来る者の一人や二人いても何の不思議もない。これ迄折角風邪ひとつ引いていないのに、うつされては堪らない。

 とは言っても今更帰る訳にもいかず、後は運を天に任せるしかない。そう覚悟を決めホールの中に入った。 

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  写真では判り辛いが、床には傾斜が付けられて前方の視界は良好。天井は高く3階席まである。やがて座席は全て埋まった。

 さて、ご高承の通り、コンサート中の撮影、録音は禁止されており、これから先の記述は、不確かな私の記憶に頼る事となる。従って事実と異なる可能性がある旨、お含み置き願いたい。

 午後4時、定刻通り照明が落とされ、先ずステージにN響団友オーケストラが姿を見せた。弦7名、木管金管9名、それにピアノとドラムスの総勢16名。早速オーボエのAの音を基に各人がチューニング。

 そして聞き覚えのある力強いピアノのイントロが始まる。普通ならここで客席はスタンディングオベーションの筈だが、如何せん観客の年齢層が高いせいか手拍子のみ。

 いよいよ三人の女性歌手が下手から手を繋いで登場、渡辺真知子のヒット曲「唇よ、熱く君を語れ」を歌い始めた。各人順番にソロで歌うが、何と言っても渡辺のパワフルな声は正に鎧袖一触、圧巻である。

 その渡辺とは対照的にスレンダーな肢体が目につく庄野真代。体型維持に努力しているのか、元来太らない体質なのか。何れにしても羨ましい限りである。

 そして相変わらず幼児体型で声も少女みたいな太田裕美。彼女が乳癌である事は知っていたが、「治療しながら歌っていく」の言葉通り、思ったより元気そうに見えた。

 曲は庄野真代の「HEY LADY やさしくなれるかい」、そして太田裕美の「南風」と続き、取り敢えず三人一緒のステージはここ迄。後は渡辺、庄野、太田の順でソロが始まる。

 このセクションに於いても、客観的に見て渡辺真知子のパフォーマンスは群を抜いており、時間的にも一番長く、ジャズ風にアレンジされた「ブルー」などを披露した。

 庄野真代に関しては前回述べた通り、あまりよく知らなかったが、「イスタンブール」の他に「モンテカルロ」もあったのだと思い出させてくれた。

 そして太田裕美のデビュー曲「雨だれ」を、当時と同じようにピアノの弾き語りで聞く事が出来、今は亡き大滝詠一のドラマチックな名曲「さらばシベリア鉄道」も感動的であった。

 これが完全に単独コンサートの場合、ともすれば退屈する事もあるが、このような形式ならば全く飽きが来ない。但し、コアなファンにとっては「聞きたい曲を聞けない」と食い足りなさを感じるかも知れない。

 また全く電子楽器の無いサウンドも、ある意味新鮮だ。そこには腹に響くようなベースの重低音も、耳をつんざくギターのディストーションも無い。

 生のオーケストラを聞くのは昨年二月、武蔵野市民文化会館での名古屋フィルハーモニー以来一年振りになるが、しかし、それがバロックや古典派から近代まで繋がる音楽の原点なのではないのか。等とちょっぴり大それた事を考えた。

  まだまだ語り尽せない話は山ほどある。だが書けば書くほど詰まらなくなりそうなので、そろそろ筆を置く事とする。

 尚、5年前に始まったこの「オーケストラで歌う 青春ポップスコンサート」は、公演回数約50回を数え、残すところ栃木県真岡市 (2/8)、千葉県船橋市 (3/7)、富山県射水市 (3/15) の3回のみと言う。もし近くにお住まいならば、足を運んでみては如何だろうか。

 最後に、今回は珍しくセットリストを 。

  <オープニング>

   唇よ、熱く君を語れ

   Hey Lady 優しくなれるかい

   南風

  <渡辺真知子

   迷い道

   ブルー

   花束をありがとう

   愛のゆくえ

   かもめが翔んだ日

  <庄野真代

   飛んでイスタンブール

   モンテカルロで乾杯

   アデュー

   月夜のワルツ

   Be yourself

  <太田裕美

   雨だれ(ピアノ弾き語り)

   九月の雨

   恋のうた

   木綿のハンカチーフ

   さらばシベリア鉄道

  <ラスト・三人>

   翼をください(観客全員大合唱)

  <アンコール>

   夢で逢えたら

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  コンサート終了後の記念写真(太田裕美氏のTwitterから転用)

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