青春浪漫 告別演奏會顛末記 10

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4.「許せない!」クマはジェラシーの炎に身を焦がした (2)

 

 投稿された「悲しい夢」に対する『夢判断』を、アグリーは次のように「DANDY」に書いていた。 

 天国の花園より夢見る少女へ・・・

 若い日々の一つの愛は、

 あなたを今まで行ったことの無い所へ連れていってくれる

 愛を与える為愛に生き、愛に生きる為、

 あなたは愛の化身となる。

 夢は眠りの為にあり、愛は涙を流すことの為に・・・。

 そして愛とは愛されたいと願うこと。

 恐れと涙の伴わない愛は真の愛ではない。

              with Love   DAY DREAMER 

 『何なの、これは』刷り上がった紙面を見てクマは激しく怒った。『何が with Love だ。 何処が判断だ。これは公私混同だ。だいたいやり方が汚いじゃないか』

 その上アグリーが、その投稿を自分の家に持って帰ってしまった事も気に入らなかった。クマは決して変態趣味ではないが、それがもしナッパの物であるとしら、彼はきっと彼女がかんだ鼻紙でも、他人が自分の物にすることを許せなかったであろう。

 更に、今度の春休みに再びクラス合宿が行われることとなり、その責任者の中にナッパとアグリーが入っていて、放課後などに時折数名で集まり、楽しそうに打ち合わせをしているのだ。

 『許せない』クマは燃え盛るジェラシーの炎に身を焦がしていた。

 そこで彼は「深沢うたたね団」団員のトシキを誘い、あるイタズラを実行することにした。その日クマは家に帰ると、例の返事に書かれてあるナッパの字を小一時間睨み続け、彼女の筆跡をほぼ完璧にマスターした。

 そして『夢判断』に再び彼女が投稿したかのように見せる為、時間も空間も超越したあたかも本物の夢のような内容の文章を書いて、翌日こっそりと投書箱に入れておいた。

 果たして、それを最初に見つけたのは、またしてもアグリーだった。彼はクマとトシキが観察しているとも知らず、ちらっとその紙片を見るや再びポケットにねじ込み、編集部に届けるどころか家に持って帰ってしまった。

 『ヤツめ、この間の投稿と見比べて、筆跡を鑑定する気だな』クマとトシキは顔を見合わせてほくそ笑んだ。

 ところが数日経ってもアグリーは、一向にそれを持って来ようとはしない。「DANDY」の編集の日まであまり日数が無かった。『アグリーは前回に勝る、超弩級の判断を考えあぐねているのか』それとなく探りに出たトシキに何も知らないアグリーは「投稿があったけど、ナッパのものではないようだ。」と漏らした。

 最初クマは自分が作文した「夢」をアグリーがナッパのものと勘違し、得意になっている時、種明しをして皆で大いに笑ってやるつもりだった。しかしトシキから報告を聞かされて、再び腹を立ててしまった。

 『アイツは何の権限をもって、ナッパ以外の投稿を勝手にボツにするのか』しかしそれと同時に、あまりにも子供じみたイタズラをしたという自責の念にもかられたのであった。

 そして木曜日の放課後、いつものように「DANDY」の編集が始められると、アグリーは多少悪びれた態度で皺くちゃになったクマが書いた「夢」を持ってきた。アグリーが去った後、その紙片はクマの手の中で引き裂かれていた。  <続>

 

  今回は恋敵同士仲良くギター2本、2パート・ハーモニーを、珍しくオーバーダビング無しの一発録りで。


雨の街角/風のかたみの日記

 

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