「ピーナッツ」70周年

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 最近の話題と言えばアメリカ大統領選挙を除き、何をおいてもアニメ映画「鬼滅の刃」に落ち着くだろう。老いも若きも、右も左も、青も赤も、猫も杓子も、馬も鹿も、挙って難解な名前をもつ登場人物達が繰り広げる世界に夢中になっているらしい。

  それなのに私は全くと言っていい程、本作について何の知識も持ち合わせていない。このように新しい物事に対し興味が沸かなくなるという事は、既に老化現象の始まりなのかも知れない。

  それはさておき、唐突ではあるが読者諸氏は「ピーナッツ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。古くは時の総理大臣も絡んだ「ロッキード事件」において、受渡された現金を意味する隠語の事か、そうでなければ炒ったり茹でたりして、ビールのツマミに合う落花生の事だろうか。

 しかし、私がこれから書こうとしているのは、もしかしたら「スヌーピー」と言った方が解り易いかも知れない、あの二足歩行が出来るビーグル犬が登場するコミック、「ピーナッツ」の事なのである。

 本件に関しては以前にも書いた事があるので先ずは復習から。 

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 「ピーナッツ」の作者はチャールズ・モンロー・シュルツ(1922ー2000)。そしてこのコミックは1950年正式に開始され、2000年作者の死去と共に終了した。実は去る10月2日は創刊70周年の記念日で、本来ならその日にこの記事を公開する心算であったが、偶々長編を連載中だった為見送らざるを得ず漸く今回投稿した次第。

 さて、半世紀に及ぶこのコミックの歴史の中には様々なエピソードが登場する。勿論全てを紹介するなど不可能なので、今回は「スヌーピー」の得意技の一つである「夢想」について簡単に説明したい。

 比較的初期の頃は、海賊かバイキングのような恰好をして「エンヤラヤット、ラムひと瓶」というパターンが多かったが、次第に「世界的に有名な(world famous) 」を冠した弁護士、裁判官、医者、スポーツ選手などのバリエーションが登場してくる。どの場合もそれらしい出で立ちで、最初は恰好をつけているが最後は大ゴケする事が多い。

 中でも第一次世界大戦のエースパイロット編は何度も登場する人気ストーリーだ。そこではスヌーピーがゴーグル付きの飛行帽を被り、愛機ソッピース・キャメル(実態は自分の犬小屋)に搭乗、宿敵レッドバロン(実在した独軍撃墜王で貴族のリヒトホーフェン)と空中戦を繰り広げる。

 結果はいつも相手に回り込まれ銃撃を受けて、機体(犬小屋の屋根)には弾痕、出入口から煙が出て終わる。また飛行中、突然レッドバロンに出くわし、思わず " Hi, Red. " と作り笑いを浮かべ、何とか見逃して貰おうとしたり(尤もリヒトホーフェンは騎士道を重んずる武人だったので、多分許してくれただろう)、他にも敵地に不時着して、戦場を彷徨うコマ数の多いものや偵察飛行に出かけ、下を見下ろしながら「あわれな歩兵たち」呟くこともある。

 ところで日本に於ける「ピーナッツ」、特に「スヌーピー」の評価はどのようなものであろうか。これは何度も言っている事だが、恐らく「カワイイ」ではないかと思う。

 それに対し私は大いに異議を唱えたい。スヌーピーのみならずユニークな登場人物達は、ある時は人生の悲哀、社会への皮肉、或いは深遠なる哲学、そしてまた底抜けに明るい笑いを我々に与えてくれる筈なのである。

 言葉では上手く伝えられないのが何ともモドカシイ。兎に角これを機に是非一度読んで頂きたい。絶対に面白いから。

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