COME COME EVERYBODY

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 コロナ禍で暮らすうちに、めっきりテレビの視聴時間が増えた。「STAY HOME」が主たる要因である事に間違いはないが、読書や楽器演奏といった昔からの趣味が、次第に億劫になってきたような気もする。

 思い返せばテレビは以前、ニュースやスポーツ中継の他は、良質(と思われる)なドキュメンタリーにチャンネルを合わせる事が多かった。しかし今は暗い世相への反動からか、専ら娯楽番組である。

 尤も娯楽と言っても、ウイットに欠ける最近の「お笑い」は見ない。理由は至極単純、「面白くない」からだ。従って人気がある(らしい)芸人の顔や名前も殆ど知らない。

 それでは一体何を視ているのか。それはもう、

  カムカムエヴリバディ』しかないではないか。

 ご存じない方はまずいないと思うが、これは日本放送協会が日曜日を除く毎朝(昼と夜に再放送あり)放送している連続テレビ小説、所謂「朝ドラ」である。

 番組のホームページによれば『ラジオ英語講座、あんこ、野球、ジャズと時代劇を題材に、三世代の女性たちが紡いでいく100年のファミリーストーリー』とある。

 実を言うと、これを第一話から視ていた訳ではない。そもそも私はこれまで朝ドラを見る習慣は無かった。それがある時たまたま、二世代目のヒロイン「るい」(深津絵里)になった頃から、何故かどっぷりハマってしまったのだ。

 私が考えるこのドラマの魅力は、先ず、向田邦子賞に輝く脚本家、藤本有紀による秀逸なストーリーの展開で、決して視聴者を飽きさせる事はない。しかも、随所にその時代の世情を象徴するトピックスやエポックメーキング的な出来事等を織り交ぜ、視ている各世代のノスタルジックな共感を呼び覚ます。そして最大の「売り」は、幾つもの伏線がまるで布石のように次々と散りばめられ、それがひとつひとつ回収されてゆくところだろう。

 世の中には「俺、テレビ、見ないから」などと、いかにもインテリゲンチャを装った発言をする人達が必ずいる。私とて哲学書くらい読んだ事はある。それでも面白いものは面白いのだ。

 ところで、この「カムカム・・・」というタイトル、中山晋平が作曲した童謡「証城寺の狸囃子」の旋律に英語の歌詞をのせたもので、ドラマの主人公はラジオから流れるこの歌を聴いて育った。

 かく言う私も、この歌には個人的な思い入れがある。子供の頃、言葉の意味も解らずにサイモン&ガーファンクルの歌を唄っていると、母親が「自分も英語の歌を知っている」と言って口ずさんでいたのだ。もしかしたらその事が、この番組に親近感を持つきっかけになったのかも知れない。

  さて、物語はいよいよ今週(3月8日)で終わる。私のように中途参加ではない視聴者の方々の感慨はひとしおであろう。既に番組の終了を憂う「カムカム・ロス」なる言葉も囁かれていると聞く。

 未だに残された謎、果たして日系女性、アニー・ヒラオカ(森山良子)は「安子」なのか。「るい」は「安子」に会えるのか。そしてどの様な結末が待っているのか。興味は尽きない。私は「豆腐屋のきぬちゃん」がアニーと何らかの関係があるのではないかと睨んでいるのだが。

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