ドライブ・マイ・カー

 始めに断っておくが、これは先日アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した日本映画の感想でも、また、その作品の原作となった村上春樹の短編小説の書評でもない。そもそも映画は観ていないし、小説の方は読んだ記憶はあるものの、内容は全く覚えていない。

 ところでドライブ、即ち車の運転に関して言えば、私が車を転がし始めてからもう久しい。ただ生業ではないので、所謂「レジャー・日常ドライバー」であり、これまでの履歴をひと言で例えるならば「無事故弐違反」となる。

 最初の違反はスピード。通常以下に速度制限された関越自動車道を、知っていながら100kmで走っていて、桜の代紋を付けた白黒ツートンカラーの群馬県警に捕まった。

 二度目は東北自動車道。久しぶりに佐野ラーメンを食べた帰り、気分良く走っていたところ、改造スカイラインGT-Rの覆面パトカーに停止を命じられた。

 この時私は、事前にこの改造車が走っているのを目視しており、後ろからチョロチョロ車線を変えては、私の車に付いて来ている事は判っていた。

 本来ならば、その時点で気づくべきだったのだろう。しかし私はてっきり地元の暴走族か走り屋だと思い込み、変に絡まれたら困るので、取り敢えずスピードを上げて逃げ、振り切った心算だった。

 ところが流石はGT‐R 。気がついた時は後ろにベタ付けされ、何と赤色灯を灯しているではないか。私は路肩に車を止め、言われるままに覆面パトの後部座席に座った。

 「随分スピードが出てましたね。急いでたんですか」おもむろに警官が口を開いた。

 「いいえ(ケッ、別に急いでなんかねーよ)」私は首を横に振った。

 だが、私はある事実に気づいた『間違いなく140kmは出していた。このままでは減点6、反則金10万円は免れない』

 そこで私はこのGT‐Rを認識していた事、フロントとリアにエアロパーツを付けるなど改造している事、暴走族と勘違いした事、云々をとうとうと語り、危険から身を守る為、スピードを上げたのだと言い張った。

 すると信じられない事に、埼玉県警はあっさりスピード違反を引っ込めた。やはり改造に税金を使った後ろめたさがあったのか(言ってみるもんだね)。

 これで無罪放免と、思わず微笑みかけたその時、警官は静かに言った「でも、ずっと追い越し車線を走ってましたよね。通行帯違反ですね」

 恥ずかしい話だが、そのような違反がある事を、私はその時まで知らなかった。

 この二回の違反、どちらも減点と反則金が科せられたが、一番痛いのは次の免許更新時、ゴールドでなくなる事だった。

 さて、二度もパトカーに捕まると流石に私も考える、3L、V6、24バルブ、DOHC。愛車のこのスペックがついついアクセルを踏ませ、違反を招くに違いない。

 それ以降、車を買い替える度に排気量は少なくなってゆき、今や1500cc。しかもオープンカーである。屋根を開け、素顔を晒して車に乗ると、まずもって違反など出来ない。ひたすら法令遵守、安全運転を心掛けている今日この頃である。

 そして本日、折しも大型連休明け。萎えた心に追い打ちをかけるように悪い知らせが届く。自動車税の納税通知だ。勿論、納税は国民の義務ではあるが、この税の使途は相変わらず不明のままだ。

 まあ、心ならずも大気汚染に与する者の一人として、仕方がない、暫くドライブは控え、村上春樹でも読み返してみるか。

      f:id:kaze_no_katami:20220331133516j:plain