普通「七草」といえば、毎年1月7日の朝、年末年始で疲弊した身体を労り、新たな年の無病息災を願って食べる粥の具材を指す事が多い。
古くは中国から伝わり、平安時代に始まったと言われるこの「七草粥」の風習は、江戸時代になって全国に広まり、今日まで連綿と続いてきた。その証拠に今では年が明けると、スーパーの青果売り場の棚に七種類をセットにした袋が並べられる。
尚、ここでいう「七草」とは所謂「春の七草」の事である。『おいおい、1月7日と言えば冬の真っ盛り。その頃手に入る雑草が何で春なんだよ』と思われる方も中にはいるかも知れない。
しかし年賀状に「新春」とか「迎春」等の言葉を使う事を思えば、何の違和感もないのではなかろうか。
さて、今更ではあるが、今回テーマは季節外れの「春の七草」や「七草粥」について深く掘り下げようという話ではない。何と我が国には「春」の他に「秋の七草」もあるというのだ。
取り敢えず名前だけは知っていた私の脳裏にある疑惑が浮かんだ、『「秋の七草」はどうも胡散臭い。確固たる由来のある「海の日」に対し、取り敢えず作った「山の日」みたいなものではないか』
念の為に調べてみると、私はとんでもない思い違いをしていた事に気付いた。奈良時代末期に編まれたわが国最古の和歌集「万葉集」の中に「秋の七草」について大伴家持が詠んだ二首が入っているのである。
即ち
秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花(すすき) 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花(ききょう)
一首目では「秋の野に咲いている花を数えると七種類あった」とし、二首目ではその具体名を挙げている。
そして私はたとえ一時でも疑った、せめてもの罪滅ぼしに、これまで撮影した約2万枚の写真の中から、この七草を探し出し紹介しようと考えた。しかしながら残念なことに「葛の花」全く見当たらず、「撫子の花」は同科同属ではあるが「シナノナデシコ」と呼ばれるものである。タイトル名を六/七としたのはその為だ。
1.【萩(ハギ)】
2.【尾花(オバナ)】
3.【葛(クズ)】 写真無し
4.【撫子(ナデシコ】
5.【女郎花(オミナエシ)】
6.【藤袴(フジバカマ)】
7.【桔梗(キキョウ)】
最後になるが「春の七草」と「秋の七草」の最大の相違点は「春」が食用であるのに対し「秋は観賞用」という事だろうか。