かって私がスピード狂で中型バイク免許取得に失敗した事は前回述べた。何故スピードに拘りを感じていたのか。それは速度が増せば増す程、死へと近づく恍惚感も増加し脳内に何らかの伝達物質が分泌されるからだと思う。特にバイクやスキーは殆ど無防備と言いてもいい程なのでよりその傾向が強い筈である。
それはさておき、どうしても簡単にスピードを得たい私は、その動力源を四輪に求めたのはある意味必然の事だったと言えよう。
取敢えず車の雑誌を数冊購入し検討に入る。とにかく「走る」ことが目的だったので、ワゴンや4ドア・セダンは論外だ。候補として、日産フェアレディ、トヨタスープラ、そして発売間もない三菱GTO。選考について書き出すと長くなるので結論から言うと、街であまり見かけない真っ赤なGTOを買ってしまった。
先程、「走る」ことが目的と書いたが、その走りとは主に週末、入院中の母親を見舞う為で、土曜の早朝家を出発、首都高から東名を通って茅ヶ崎へ向かう。午前5時頃、天気が良ければ朝焼けの街を駆け抜け、遠く富士山を望みながらのドライブ。非常に気分爽快である。
しかも私のGTOは社会的にそれ程認知されておらず、ひと度追い越し車線に出ると、フェラーリとでも勘違いしたのか前方の車が次々と道を譲る。これはもう行かねばならない、思わずギアを2速まで落としアクセルを踏み込む。3L V6、24バルブのエンジンが低い唸り声を上げながら加速し、視界が狭くなってゆくのが判る。これこそが望んでいた恍惚感だ。
それから30年あまりの時が流れ、その間、両親は亡くなり私は4回車を乗り換え
た。いまでは茅ヶ崎へ行く事も無くなり、制限速度を超えはしないが、相変わらず2
ドア・スポーティーカーに乗っている。
ところでこのタイトルだが、私の運転技術は未熟でドリフト走行など出来ない事を
示したものである。