氾濫危険水位

  先月、関東地方を襲った台風15号は、予想を遥かに超える爪痕を残して去り、未だその復旧作業が片付いていない中、今度は1958年以来、最も大きく破壊的な台風19号「ハギビス」が来襲との報が列島を駆け巡った。

 気象庁はその説明をする際、「狩野川台風」という名を引き合いに出したが、私にとって台風と聞いて直ぐに思い浮かぶのは、青函連絡船を沈没させ、水上勉の「飢餓海峡」のモチーフにもなった1954年の「洞爺丸台風」や、富士山レーダーを建設する契機となった1959年の「伊勢湾台風」である。 

 昔からこの厄介な自然災害に、幾度となく悩まされ来た我が国であるが、これだけ文明の利器が発達した時代に、構造物や家屋の損壊ならともかく、いまだに死傷者が発生するのは慙愧の念に耐えない。

 これを書いている13日午後現在、既に死者、行方不明者合わせて三十余名と伝えられており、今後更に増える恐れもある。しかし、もしかしたら中には避けられた事故もあったのではないだろうか。実際救助された人が、「もう少し早く避難すれば良かった」と話しているのをテレビは放送していた。

 今回は事前に「命を守る行動」という言葉と共に、被害予想を過小評価し、自分は大丈夫と考える「正常性バイアス」という心理学用語を、盛んに聞いたような気がする。そして、各マスコミも口を揃え「早目の避難」を呼びかけ、「不急不要の外出」や「田畑や河川の様子を見に行く事」を戒め、NHKに至っては「必ず毎回そのような人がいる」とまで言ってのけた。

 かく言う私もつい「大丈夫」と考えてしまいがちな性格なので、従前より住んでいる地域の行政が発信する防災気象情報メールや緊急指示メールに登録し、他にNHKニュース防災、Yahoo防災速報も利用している。

 これらは普段、些細な出来事についても都度送付して来て、若干鬱陶しく思う事もあるが、今回は9日から始まった行政のメールで、最寄りの消防署が土嚢の無料配布を行っている等の有用な情報を得て、早速利用する事が出来た。

 そしていよいよ台風が直撃した昨12日、私のiPhoneは休みなく状況を流しながら、拙宅の近くを流れる荒川の警戒レベルの変動と、氾濫危険水位に依る避難準備から勧告までを、こんな音があったのかと思う警告音と共に伝えてくれた。

 いつでも避難出来る準備を整え、まんじりともせずに夜を過ごした結果、幸い堤防は決壊する事はなく、13日早朝には水位が下がり始めたとのメールが入った。そして私はカメラを持ってのこのこ出かけたのだった。いい歳をしながら野次馬のようで不謹慎極まりないと、お叱りを受けるかも知れないが。

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