SOLO LIVE 2019 ~元気であれば~ (前編)

 今年6月27日、さいたまスーパーアリーナへ「ENCARE !!  ENCARE !! 」と題された小田和正のコンサートを見に行った。その模様の一部はNHKBSプレミアムで放送されたので、ご覧になった方もいるかも知れない。

 とにかく小田氏の年齢を感じさせないパフォーマンスに、3時間に亘り圧倒されるばかりであったが、それについては以前書いたので良ければ以下を参照頂きたい。

kaze-no-katami.hatenablog.jp

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 その後、登録しているチケットサービスからのメールで、小田和正の昔の相棒である鈴木康博のコンサートがある事を知り、これをスルーしては筋金入りのオフコースファンとして、片手落ち(放送禁止用語です)ではないかと考え、早速申し込んだところ、すんなりと入手する事が出来た。 

 小田氏のチケット争奪戦で散々抽選に外れまくった事を考えれば、全くもって月とスッポン、バラとぺんぺん草、水爆と竹槍くらいの違いだ。しかも、全席自由で入場整理番号は何と1番、真っ先に会場に入る事が出来る。喜びというよりも一抹の不安さえ覚える状況である。

  これまで私は、鈴木氏がソロになって以降も度々コンサートに足を運んできた。最初の頃は中野サンプラザや、今は無き新宿厚生年金会館大ホールといった、比較的大きな会場でバックバンドを従えてというスタイルだったが、次第に活動が控えめになり、それでも地方の小さな小さなライブハウス等で、地道に演奏を続けている事は知っていた。

 昨年11月は、東京日本橋室町にある三井ホールのコンサートで、久々にバックにセンチメンタルシティーロマンスのメンバーを迎えての公演というので、当然のことながらこれを見に行った。

 その時の偽らざる感想は、やはり最近の曲はどうにもしっくりこない、もっと端的に言えば「ツマラナイ」であり、それに引き換えオフコース時代の曲が始まると、観客のノリも全く異なり、イイ時代だったあの頃を彷彿とさせる熱狂を感じる事が出来た。

 オフコースの殆どのシングルA面を担う小田氏に対し、鈴木氏はその対角として、いぶし銀のような職人技が持ち味であった筈なのに、単なる懐メロ歌手に落ちぶれてしまったのかとさえ思わせる凋落ぶりは、あたかも美しかった恋人が、見る影も無く太ったオバサンになってしまったような、はたまた長年の友人に裏切られたような、非常に残念な思いを私にさせる事となってしまった。

 そして今回は最初から最後まで完全にソロ・ライブ。ギター1本の弾き語りである。

 ここで彼のギターに関して言えば、オフコースが売れていない頃、ギター教室の講師をしたり、洋楽のレコードを耳コピして楽譜起しのアルバイトをしていた事もあって、アコースティックギターに於いてはかなりの腕前である事は確かだ。

 例えばオフコースのデビューアルバムに収録されている小田氏の曲「地球は狭くなりました」では、ジャズによく用いられるオクターブ奏法をアコースティックギターでプレイしたり、他にはスティーヴン・スティルスを思わせる変則チューニングを使用する事もあった。

 それでも今時のコンサートの、オープニングからいきなり観客総立ちで、そのまま一気に3~4曲続くという一般的な流れに対し、かって全く売れていなかった頃の、あのお通夜みたいな演奏会では、聴く方もかなり辛い。

 今回の会場はJR川崎駅前にあるラゾーナ川崎プラザソル。客席数200、小田氏の数万人収容のさいたまスーパーアリーナとは比べる由もないが、その方がかえってこじんまりと纏まる可能性もある。

 そして11月16日、折しも新駅、高輪ゲートウェイ開業に伴った線路切り替え工事の影響を受け、軒並み鉄道が運休する中、私は昔の魔法が復活する事を期待して、一路川崎へ向かったのだ。

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