エチケットをお忘れなく

 今日11月21日はボージョレ・ヌーヴォーの解禁日。我が国では一時期、随分騒がれたような気もするが、最近は殆ど話題にも上らなくなってしまった感がある。

  出来立てのこの若いワインについて、昨年はこんな事を書いているのを見つけた。

kaze-no-katami.hatenablog.jp

 あまり話題にならないのは、それだけこの年中行事が風習になったのか、それとも飽きられてしまったのか。かってまるで生マグロの美味しさを知った中国人のように、ボージョレを買い漁り、輸入量世界一を誇っていた日本は、2004年以降徐々に減少。今年のシェアはついに全輸出量の50%を切ったらしいので、多分後者の方なのだろう。

 それでもワイン全体から見れば、現在日本の成人は年間4.5本を消費しており、その量は30年前の3倍にあたるという。このような状況下、ボージョレを含むフランスワインが減っているのは、味が判る人が増えたというよりも、新興勢力であるチリワインの数字が伸びているせいと思われる。

 ちょうどフランスワインの減少が始まった頃から、チリワインの増加傾向が見られるようになったが、これはチリの気候がぶどう栽培とワイン製造に向いていた事と、日本とチリの間で経済連携協定EPA)が結ばれていた為、関税がかからないという優位性があった為である。

 従って今年の2月、EUとのEPAが発効し関税が撤廃されたので、今後フランスワインの巻き返しが起きる可能性も充分に考えられる。

 さてここ数年、私はワインをよく飲むようになった。例えば鮨屋など和食の店へ行っても、先ず最初はビールで始め、後は大概白ワインというパターンで、日本酒は殆ど飲まない。多分、今はワインが体に合っているのだろう。

  ところでフランス料理のフルコースとなれば、魚は白で肉は赤と相場は決まっているようだが、それはフランス人の味覚によるものであろうし、日本人が無理にそれに合わせる必要はないと思う。だいたい生ハムとメロンを一緒に食べるような舌など、信じられる筈がない。

 では私自身の舌はどうかといえば、これが非常に心許ない。甘いとか酸っぱい位は判る様な気もするが、ソムリエみたいに語彙の限りを尽くして、何かに例えたりは出来ないし、する気も無い。

 レストラン等でテイスティングを促されても、昔は一応グラスを揺らして香りを嗅いだり、少量口に含んで味を確認するフリをしていたが、はっきり言って時間の無駄なので今は全くしない。もしかしたらマナー違反になるのかも知れないが、それで咎められた事は無い。

 ただ一般的に言える事は、日本では白は冷え過ぎ、赤はぬる過ぎの傾向はあると思う。

 さて、ここからが今日の本題。今回のタイトルの「エチケット」。聡明な読者諸氏がご存知の通り、これはワインのラベルを意味するフランス語である。これを見れば、そのワインの素性が全て判る履歴書みたいな物だ。

 そこで店のギャルソンに「ちょっとエチケットを見せて」などと言えば、さも通のようなフリが出来て、連れの女性からは「XXさんって、素敵!」と思われるかも知れない魔法の呪文なので、今日からはラベルと言わずエチケットと覚えて頂きたい。尚、それが原因で嫌われたとしても、当方は一切責任は持たないので悪しからず。

 閑話休題、話をボージョレ・ヌーヴォーに戻す。 

 フランスは今年の夏、記録的な猛暑となった為、ボージョレ地方のぶどうの収穫量は2割減との事であったが、その後好天に恵まれ完熟して糖度が増したらしい。そしてワインのお味はと言うと、生産者によれば「凝縮した果実味と上品な酸味」。テレビではワインよりも芋焼酎の方が似合っていそうな女性が「瑞々しくて飲みやすい」とかほざいていたが、果たしてどうだろうか。

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