『二度あることは三度ある』その言葉に従えば、前回、前々回で投稿した食レポとも店の紹介ともつかない料理写真張り付け記事を書けるのも、残すところあと一回。読者諸氏に於かれても、うんざりする事無く『仏の顔も四度』まで延長する心算で何卒お目こぼし願いたい。
さて、唐突ではあるが「うどん」か「蕎麦」かと問われれば、あなたはどちらを選ぶだろうか。私の場合は間違いなく蕎麦である。
子供の頃は御多分に漏れずスパゲティ小僧だったが、歳と共に次第に洋から和へと嗜好も移行、気が付けばいつの間にか蕎麦党に名を連ねるようになっていた。
では何故「うどん」ではないのか。蕎麦の方が食物繊維が豊富で、蕎麦湯には血管を強くするルチンが含まれている、などという健康志向の問題では無い。考えてみれば特に「うどん」を嫌う理由も見当たらず、要は太い麺が苦手なだけなのかも知れない。
それでも年に一度、鍋が恋しい季節になると、年中行事の如く必ず出掛けて行く「美々卯」という「うどん屋」がある。
ここは自称「泉州・堺で200年続く料亭」らしく、日本料理全般の他「すき焼き」や「しゃぶしゃぶ」も提供するが、何と言っても元祖「うどんすき」として有名な店だ。
ところがである。首都圏が未だ非常事態宣言下にあった5月20日。何気なく眺めていたネットニュースの記事に私の目は釘付けになった。
「うどんすき」の東京美々卯が全6店閉店へ コロナ影響 売上が落ち込み事業の継続困難 関西は継続(産経新聞)
これには本当に驚いた。何十年も前から暖簾を潜ること数知れず、高C/Pで知り合いの間でもすこぶる評判良好、行けば常に賑わっている印象ばかりが残る店である。「そんな事もあるのか」と茫然としていると、友人の一人が早速その事をLINEで伝えて来た。
とは言っても私に何か出来る訳ではない。今年の暮、大手を振って酒宴が許されるような状況になったとしても、いつもの店のあの味はもうそこには無い。まるで旧知の友人が先に逝ってしまったような寂しさを覚える。
恐らく読者諸氏の中にも同じように、行きつけの店、お気に入りの店を失くしてしまった方もおられると思う。
今回は以下の写真を以って在りし日の「美々卯」を偲び、その記憶を止める墓碑としたい。
東京メトロ銀座線「京橋」下車。店の入口付近
席に案内される。
先付
造里
名物「凍結酒」 日頃、日本酒は殆ど飲まないが、ここだけは別。
揚物
メインの「うどんすき」車海老は活きている。
薬味はレモン、九条ネギ、紅葉卸、しょうが。
尚、「美々卯」は 東京からは撤退したが、「うどんすき」の具材とつゆのセットは通信販売で入手可能。またどうしても店で食べたい場合は、大阪、京都、名古屋の何れかに行けば良い。
しかし、その為だけに新幹線に乗るのは少々辛い。何れにしても、今後更なる「お気に入り」閉店の知らせが届かない事を願って止まない。