想い出は帰らない

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 昼過ぎ、南南西の風が厚い雨雲を運んで来た。

一瞬にして空を覆うスコール。昔、パダンのホテルの部屋から眺めた景色に似ていた。

 

 程なく大粒の雨が、風に揺れる街路樹の葉を叩き、行き交う車のライトが、濡れたアスファルトに滲んだ。

 

 あの日も、心を閉ざして、嵐が過ぎるのを待つしかなかった。そして僕らが愛した優しい日々は、 いつしか物語に似た過去に変わった。

 

突然の電話のコールが、7回を数えて沈黙した。

ほんの少し間、鼓動と秒針のシンクロが乱れた。

深く息を吸いゆっくりと吐いた。

冷たいレモネードをひと口飲んだ。

やがて雨雲は走り去り、パールモーブの黄昏が辺りを包んだ。

 

 何処か遠く、同じこの空の下、君は今、移ろう季節を、誰と見ているのだろう。

1986年の眩しい夏は終わろうとしていた。

 

 

 昔作った歌を基に、洒落たショートストーリーを書いてみようと考えたが、残念なことに訳の分からない散文しか出来なかった。それでも曲の方は先にYouTubeに上げてしまったので、良かったら聞いて頂きたい。


想い出は帰らない/風のかたみの日記

  尚、下手な歌を聞きたくない方はこちらを。


Stop ! Never turn back Memories /風のかたみの日記

 

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