梅雨の晴れ間

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 暫く天気の悪い日が続いた。「梅雨だから仕方がない」と言ってしまえば身も蓋もないが、7月2日、この日は予報通り朝から「これはもう出掛けるしかない」ような快晴。取敢えず55~200mmのズームレンズを装着したミラーレス一眼だけを手に車に乗る。行き先は午前9時に開園する「川口グリーンセンター」。

 駐車場を出て直ぐ、バイクに乗った近所のラーメン屋の主人に会った。恐らく昨日出前した食器を回収しているのだろう。いつも通り私が右手を上げ合図すると、同じように返事をしてくれた。そう言えば暫く店に顔を出していない。

  目的地への道すがら、好きな洋楽のCDに合わせ大声で歌いながらの運転。これは自粛ストレスの発散手段として、すっかりマイブームになった感がある。

 埼玉県川口市立「川口グリーンセンター」は日本の都市庭園100選にも選定された植物園だが、今般のコロナ禍により4月から休園。緊急事態宣言が解除された5月25日、一部の屋内施設を除き再開された。尚、入園前の体温チェックとマスク着用が義務付けられている。

 ところが6月1日、(恐らく事前のノーティスはあったのだろうが)突然園内の1/4にあたる敷地が改修工事の為立ち入り禁止となり、しかもその作業は2022年3月末まで続くと言う。非常に残念な状況であるがこればかりは仕方がない。

 私は此処の年間パスポートを所持していたが、たまたま期限切れになっていたので新たに購入。その際、受付の年配男性に「閉鎖箇所があるのに料金は変わらないのか」と尋ねてみた。勿論本気でハードネゴをする心算など毛頭無い。そうやって他人と会話するを楽しんでいるのだ。当然誤解を招く事のないよう笑いながらの会話である。

 草花の写真を撮りながら園内をブラブラしていると、途中とてもアマチュアとは思えない撮影機材を抱えた老人が三脚を構えており、少し言葉を交わした。

 私が此処の改修工事が令和四年の三月末までかかる事を話すと、彼は自分はそこまで生きていないよと言って笑った。本来なら笑うような事柄ではないだろうが、何故か私も思わず一緒に笑ってしまう。そうする事がごく自然に感じられたのだ。

  さて折角私も写真を撮って来たので、良かったら御覧頂きたい。

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ナデシコ

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ユリ

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ボタンクサギ(牡丹臭木)

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タマアジサイの蕾

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アガパンサス

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パイナップルリリ

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ギボウシ

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バラ

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アメリカンブルー

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キチョウ(黄蝶)1

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キチョウ(黄蝶)2

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ハナスベリヒユポーチュラカ

 ひと通り園内を回り終え広場に戻って来ると、自販機で清涼飲料を買いテラスの椅子に腰を下ろした。気温は既に30度を超えているのだろうが、南東4mの風が頬に心地良くそよぐ。

 本当はビールを飲みたいところ、しかし園内は禁酒であるし、第一帰りも車を運転しなけばならない。

 涼し気に吹き上げる噴水を遠くに眺め、冷や汗をかいたペットボトルの栓を開けて冷えた液体をひと口飲む。『甘い、しかし昨夜食べた水蜜桃の甘さとは違う』そんな当たり前の事を考えながら、暫くぼんやりとしているとふと睡魔に襲われた。

 時計の針は午前10時半を指している。この後何処で何をするか、明日からはまた天気が崩れるらしい。2020年7月2日、梅雨の晴れ間は未だ始まったばかりだ。

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新型コロナで失くしたもの

 

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美々卯 京橋店

『二度あることは三度ある』その言葉に従えば、前回、前々回で投稿した食レポとも店の紹介ともつかない料理写真張り付け記事を書けるのも、残すところあと一回。読者諸氏に於かれても、うんざりする事無く『仏の顔も四度』まで延長する心算で何卒お目こぼし願いたい。

 さて、唐突ではあるが「うどん」か「蕎麦」かと問われれば、あなたはどちらを選ぶだろうか。私の場合は間違いなく蕎麦である。

 子供の頃は御多分に漏れずスパゲティ小僧だったが、歳と共に次第に洋から和へと嗜好も移行、気が付けばいつの間にか蕎麦党に名を連ねるようになっていた。

 では何故「うどん」ではないのか。蕎麦の方が食物繊維が豊富で、蕎麦湯には血管を強くするルチンが含まれている、などという健康志向の問題では無い。考えてみれば特に「うどん」を嫌う理由も見当たらず、要は太い麺が苦手なだけなのかも知れない。

 それでも年に一度、鍋が恋しい季節になると、年中行事の如く必ず出掛けて行く「美々卯」という「うどん屋」がある。

 ここは自称「泉州・堺で200年続く料亭」らしく、日本料理全般の他「すき焼き」や「しゃぶしゃぶ」も提供するが、何と言っても元祖「うどんすき」として有名な店だ。

ja.wikipedia.org

 ところがである。首都圏が未だ非常事態宣言下にあった5月20日。何気なく眺めていたネットニュースの記事に私の目は釘付けになった。

 「うどんすき」の東京美々卯が全6店閉店へ コロナ影響 売上が落ち込み事業の継続困難 関西は継続(産経新聞

 これには本当に驚いた。何十年も前から暖簾を潜ること数知れず、高C/Pで知り合いの間でもすこぶる評判良好、行けば常に賑わっている印象ばかりが残る店である。「そんな事もあるのか」と茫然としていると、友人の一人が早速その事をLINEで伝えて来た。

 とは言っても私に何か出来る訳ではない。今年の暮、大手を振って酒宴が許されるような状況になったとしても、いつもの店のあの味はもうそこには無い。まるで旧知の友人が先に逝ってしまったような寂しさを覚える。

  恐らく読者諸氏の中にも同じように、行きつけの店、お気に入りの店を失くしてしまった方もおられると思う。

 今回は以下の写真を以って在りし日の「美々卯」を偲び、その記憶を止める墓碑としたい。

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東京メトロ銀座線「京橋」下車。店の入口付近

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席に案内される。 

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先付

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造里       

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名物「凍結酒」 日頃、日本酒は殆ど飲まないが、ここだけは別。

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揚物   

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メインの「うどんすき」車海老は活きている。 

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薬味はレモン、九条ネギ、紅葉卸、しょうが。

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 尚、「美々卯」は 東京からは撤退したが、「うどんすき」の具材とつゆのセットは通信販売で入手可能。またどうしても店で食べたい場合は、大阪、京都、名古屋の何れかに行けば良い。

 しかし、その為だけに新幹線に乗るのは少々辛い。何れにしても、今後更なる「お気に入り」閉店の知らせが届かない事を願って止まない。

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たまに行くならこんな店

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 「味を占める」= 一度経験した利益に味を覚えて、またそれを望む。(広辞苑 第六版)

 そうなのである。私は味を占めてしまったのである。七面倒くさい理論を捏ね繰り回したり、何の役にも立たない美辞麗句を並べ立てたり、如何にも尤もらしい人生訓を宣うたり、人の神経を逆撫でするアジテーションを喚いたり・・・。別にそんな事をしなくても、美味しそうな料理の写真を何枚か張り付けるだけで、充分にブログは成り立つのである。

 いきなり年甲斐もなく、世を拗ねたような書き出しから始めてしまったが、実際のところ文章を書くのが大儀に思えて仕方が無い。勿論、何も書かなくても何ら問題がない事は充分承知。それでも数日間、投稿せずにいると次第に不安を感じる。これはもう明らかに「新型はてなウイルス」に感染した兆候だ。

 そこで考えたのは、またしても自分で作った訳でもない「料理写真の羅列」という安易な道の選択だ。有難い事に前回の日本料理「ざくろ」の記事は予想外の反響を賜り、ここは一つ、二匹目のドジョウを狙おうと考えたのである。

 だが前回はフェイスブックの「想い出」にかこつけて何とか正当化したが 今回は大義名分が立たない。

 そこで「世界で一番多くのはてなスターミシュラン・スターを持つシェフ」と呼ばれたジョエル・ロブションの名を冠する「ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」というフレンチレストラン(因みにここは二つ星)であれば興味を持って頂けるのではないか、との結論に至った。

 さて、そこで2019年某月某日

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  やって来たのはJR山手線「恵比寿駅」。ここから「恵比寿ガーデンプレイス」迄は動く歩道で繋がっており、そのガーデンプレイスの一番奥にある建物の中に、目指す店が入っている。

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  早速中へ、席と料理は予め予約済。

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 リボンが結ばれたナプキン、オサレだ。

  そしていよいよ宴の始まり。尚、以下にやたらと長く意味不明の文言が並ぶ料理名を記すが、私自身は全く理解していないので悪しからず。

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茨城県産メロン ガスパチョ仕立て、リレ・ブランのジュレに注ぎ リコッタチーズのソルベを浮かべて

 

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カンパチのカルパッチョ シトロンキャビアとスパイスのコンディモン カラマンシーの香り

 

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半熟卵 コロナータ産ラルドをまとわせ、ピペラードのクーリと一緒に

 

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青森県産 平目 香ばしく焼き上げ、アーティチョークのバリグールとバジルのエッセンス

 

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フランス ロゼール産 仔羊背肉のロティ サラダパストラミとポムピュレと共に

 

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アナナス なめらかなココナッツのムースとシトロンヴェールを閉じ込めたグラニテを合わせて 

 飲み物は基本的に赤白ワインだが、試しに好きなビールを頼んでみた。 やはり注ぎ方も一流、見事だ。

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  如何だっただろうか。こうして振り返ると味は勿論の事、熟考された彩りも素晴らしいの一言に尽きる。そしてもう一つ特筆すべきは、知識と節度を兼ね備えた大勢の若いスタッフのサービスである。

 確かにガード下の若干衛生管理がヤバそうな焼き鳥屋で、如何わしい酒類を呷りながら大声で語らうのも、それはそれで楽しい。しかし偶には少しオシャレしてこんな店に行ってみるのもイイものである。

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あの素晴らしい夜をもう一度

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 フェイスブックに登録している方ならご存知の事と思うが、メニューの中に「思い出」という機能がある。これは当該日と同じ月日に以前自分がシェアした写真や文章がある場合、それを表示し改めてシェアを可能とするものだ。

 重要案件とは違い殆どは細かい日付など記憶していない出来事なので、ある意味備忘録的な役割を果たし、自分でも感慨深い事柄も多い。

  そして今回「最近の出来事から過去の思い出まで、Facebookでの思い出の数々を振り返ってみよう」という直訳風日本語と共に現れたのは、昨年食事に出かけた東京都中央区日本橋室町にある日本料理レストラン「ざくろ」の記事。

 そこで私の灰色の脳細胞が閃いた。

 『今更フェイスブックでシェアしても詰まらないし、これを流用し写真を貼り付ければ、多少ページの表示が重くなるにしても、いつものショーも無い文章を捻りだす手間も省け、手っ取り早くブログが一つ完成するのではないか』

 という事で早速お手軽にでっち上げた記事でお茶を濁す事とする。

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東京メトロ銀座線「三越前」下車、COREDO室町1へ。

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6階にある「ざくろ」の外観。この店は昔、中央通り沿いの地下にあった。

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先ずはオサレにシャンパ

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前菜「蟹サラダ」

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「貝の酒蒸し」

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「トマトサラダ」ドレッシングガ絶品!

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「スズキの唐揚」と「アスパラ豆腐」

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メインは勿論黒毛和牛!

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「ポン酢」と特製「胡麻だれ」

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締めは中居さんがしゃぶしゃぶした出汁でラーメンを作ってくれる。

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別腹デザートはTopsのチョコレートケーキ。

 二次会は斜向かいにある三井タワー内の5ッ星ホテル「マンダリンオリエンタル東京」のバー。

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37階からの眺め。生憎外は雨模様、梅雨だから仕方がない。

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JW青のストレートをブランデーグラスで。

 さて永らく続くSTAY HOMEの日々。外食が不要不急である事に変わりはないが、これが僅か一年前の出来事と思えば隔世の感さえある。聞くところに拠れば県境の関所は取り払われ、飲食店の営業時間の縛りも緩くなったらしい。しかしそれでも尚、一抹どころか二抹も三抹も不安は残る。願わくば一日も早く、楽しかったあの頃の夜を取り戻したいものである。

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 ざくろ」からライトアップされた「三井本館」を望む

季節の花(水無月2)

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 梅雨入り宣言から凡そ一週間余り。真夏を思わせる気温の中、流石にマスクを付けたまま炎天下を歩くのは、かなり危険である事を体感した。そして漸く昨夜から雨が降り続き、梅雨らしい肌寒い朝が訪れた。

  新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言解除後も、食料買い出しは相変わらず三日に一度を守っているが、このところスーパーに行くと熟した梅の実が大量に並べられているのが目に付く。

 それを見て私は、昨年久し振りに「梅酒」を漬けた事を思い出した。

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 上の写真は昨年仕込んだ時のもの。それが一年経つと下のようになる。

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 試飲してみると、これが甘い。否、甘過ぎる。明らかに氷砂糖の入れ過ぎである。フェイスブックの友人からソーダ割りにすればいいとアドバイスを貰ったが、どうしても飲みたい訳ではないので、暫く様子を見る事にした。その内、10年物になるかも知れない。

  ところで雨が続くと困るのは先ず洗濯だ。我が家には乾燥機が無いので部屋干ししなければならず、下手をすると生乾きの嫌な臭いがこびりついてしまう。

 次は室内の湿度の上昇。家にある楽器に悪影響を及ぼす事は確実。エアコンで除湿するとどうしても室温も下がり寒くて堪らない。

 他には車を運転する際、屋根を開けられない事位か。

  しかし最も危惧するのは大雨により水害等が発生し、避難を余儀なくされる事であり、このような状況下、間違ってもそれだけは起きないよう願うばかりだ。

 さて、前回の「季節の花」の後編を作ってみた。代わり映えもせず心苦しい限りであるが、もし良ければ御覧願いたい。


季節の花 (その二) /風のかたみの日記

 

 

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季節の花(水無月1)

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 暫くの間ブログの事は忘れてリフレッシュしようと考えた。「主語と述語の関係は正しいか、漢字は間違っていないか、『てにをは』は妥当か」等々、日常生活をする上であまり重要ではない事柄を考える手間から逃れたかったのだ。

 ところがどっこい、そうは問屋が卸さない。あろうことか安眠を貪る私の夢の中に「新型はてなウイルス」が侵入し、その夢の中で私はパソコンを立ち上げ、何やら一所懸命に文章をタイプしているのである。

 そして目覚めると、どうした事か、つい先ほど書いた筈の素晴らしい名文は何処かへ消え失せ、そこには煌々と明かりを点けたまま、寝落ちした自分がいるだけなのだ。

 思いの外、この病は重い。もう暫く休養が必要と思われる。

 ところが更新を怠っている間にも前回のブログに付された「はてなスター」は増殖を続け、今やその数何と580。このままでは立寄って下さった読者の方々に対し、申し訳が立たないのである。

 という訳で急遽、最近撮影した草花の写真を、省スペースを兼ねて短い動画に編集しYouTubeにアップ。ささやかながらこれを御礼の印にしたいと思う。


季節の花/風のかたみの日記

 

 

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連載を終えて

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 遠い日の夏、私はこの「青春浪漫 告別演奏會顛末記」という物語を書いた。きっかけは当時一浪中だった元学級委員メガネユキコ女史から「フェアウェル・コンサート」のライブ・テープの追加注文の連絡を受け、理由を訊けば、同級生だった女子が入院治療中なので見舞いに持って行きたいと言う。

 私は辛うじて大学生になっており、しかも夏休み中バイトもせず家でブラブラしていたので、二つ返事で承諾した。そしてテープをダビングしている時、ふと、これだけではあまり芸が無いなと考え、コンサートの裏話を面白おかしく書く事を思いついた。

 高校時代の日記、機関誌ダンディー、授業中に交換した様々なメモ、未だ鮮明だった記憶を辿って、およそ一週間ででっち上げ、直筆したノートを持って、わざわざ大学の図書館に行きコピーを取った。現在のように近所にコンビニなど無い時代である。

 無いと言えばパソコン、携帯電話といった今ではあって当然の物も存在すらしていなかった為、コミュニケーションを取るには直接会うか、家の固定電話を使うか、または手紙を書くかに限られていた。

 ともあれ、時は流れ、季節は廻り、こうして衆人の目に駄文を晒すことに抵抗を感じない年齢になって、非常に感慨深いものがある。本当は写真等もふんだんに添付したかったが、被写体となった人達の了承を取ろうにも、連絡先が判らず断念した。

 ただ文中に多く登場する敵役的存在「アグリー」のモデルになった親友には、電話で「貴方の事をボロクソに書いているよ。」と報告すると、笑って承諾してくれた。

 尚、この物語は限りなく現実に近いフィクションであることを申し添える。

 

 上記の文章は私がこの物語を初めて「はてなブログ」に投稿した2017年1月に書いたものである。それから三年が経過した今、再掲する理由は既に述べた通りだ。 

kaze-no-katami.hatenablog.jp

  その結果、多くの方々に読んで頂き、私の目論見は大成功、想像した以上に達成感を得る事が出来た。これもひとえに読者の皆様のご厚情の賜物であり、誠に有難く、どのようにして謝意を伝えるべきか、私は未だその言葉を見つけられないままである。

 今回再掲するにあたって、前回と大きく異なる点は、当時我々が作った拙い楽曲までも添付した事で、厚顔無恥の度合いは殆ど老害レベルにまで達したと言えそうだ。

 実を言うと私は、昨年幾つかの中長期計画を立てた。その内の一つが、これまで一緒にプレイした仲間達に声をかけ、各人自分がやりたい曲を持ち寄って演奏、録音、CDを作ろうというプランである。現在我が家には、高校時代から見れば夢のような楽器や機材が揃い、DTMという助っ人も控えている。これならば時間や費用を気にすることなく、好きなように出来るのではないかと考えたのだ。

 そのメンバーの中には、20世紀最大のメロディーメーカーになる筈だったアグリー氏も当然含まれており、私は今年の年賀状に「音楽をやりましょう」と書いて出状していた。全く「三つ子の魂百まで」の言葉の通り「レコーディングごっこ」は幾つになっても止められないようである。

 しかしその後、新型コロナウイルス禍という不可抗力によって計画は頓挫したままである。いつの日か実現したいと考えているが、物語の中で少し触れたドラマーの青山純氏は、残念な事に57歳という若さで鬼籍に入り、我々もいつ何時、何が起きても不思議ではない年齢に差し掛かっている。あまりウカウカしてもいられないのだ。

 ところで今回、1ヶ月にも満たない期間であったが、所謂「連日投稿」は私にとって初めての試みだった。文章自体は出来上がっているものの、一部を手直しすると後々迄書き直す羽目になったり、何よりもYouTube用の動画作成に時間をとられ、かなりのハードワークだった事は否めない。

 そこで、ここは少し休憩し、頭を休ませて、今後に備えようと考えた次第。取敢えずは先ず、部屋中に散乱しているカセットテープや写真の片付けから始めようと思う。

 さて、最後はこれまでのミュージック・ライフで得た教訓「自分で弾かない、歌わない」に基づき、コンピュータに打ち込んだ自作の古典的正統派バラード「A Memory You Left」で締める事としたい。

 それではまたお会いしましょう。


A Memory You Left/風のかたみの日記

 

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